2012年8月21日火曜日

歩け歩けどこまでも(1)

 好きなことに歩くことがある。目的は腰痛の克服であったり、肥満防止だったり、良いことはいっぱいある。歩き始めはかかとや膝が痛むが、しばらくすると気分が良くなる。アパートの階段横に南天が植えてあったり、すし店のご主人が、はしごに乗って車の屋根を洗っていたり。
 地球上での人間生活の一瞬を垣間見ることができる。小さな焼き鳥屋さんの換気扇が程よく汚れている。きっと炭火で美味いだろう。想像する。 
 子供の3輪車、高校のステッカーが貼られた自転車。おじいさんが椅子からこちらを見ている。おじいさんの前を通り過ぎる時、帽子のひさしに手をかけて会釈する。驚いたことに、向こうはきちんと頭を下げる。古い日本がある。ある秋の日、一本の柿の木にたくさんの実がなっていた。立派なものだとじっと見上げていた。柿の木の向こうに2階の窓が開いていた。 おばあさんがじっとこちらを見ていた。眼と眼があった。ぴしゃりと戸を閉められた。古い日本があった。

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