2012年8月24日金曜日

歩け歩けどこまでも(4)

 歩きすぎて、へたり込んだことがあった。水を飲みたいが、車を洗っているところへ行って、水をくれというと、きっと変な怪しいおじさんに思われるだろうな。昔の戦争、歩兵の行軍を想像する。どれほどきつかったのだろうか、荷物を背負って、フラフラになって、眠りながら歩くのだと父は言った。敵中で落伍すれば、それは死を意味するのだと。靴擦れも怖い、水筒の水も大事。詩人・児童文学者の山本和夫は、その行軍を、「燃える湖」という作品で描写している。自らの体験を、児童向けに書いた。倒れた友を抱えて歩く力は誰にも残っていないと。それに比べれば、肥満の防止だとか、贅沢病の克服だとか。ふざけた話だ。夕方に歩いていたが、日が暮れてくるとさみしい。あちこちの家が明かりをともし、なかには風呂に入って笑っている家もあって。声が響いていて。この地球で人類は増え続けているのか。国境とは何なのか、数学とは何か。なぜ生きているか。などと考えても困ることがちらちらと浮かんでは消える。

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