2012年8月11日土曜日

豪雪とスキーと洗濯と

昭和38年の(さんぱち)豪雪。僕は小学5年だった。普段雪が降らない故郷に、ものすごく雪が降った。家は明治の初めの建築、本当は江戸かもしれない。なにしろ曽祖父は江戸時代(文久)の生まれだった。これはどうでもよいか。雪の重みで家が危ないから、父は屋根雪を降ろす。雪は中庭から背戸、おおせどという田んぼと畑の間に運ばれ、そこは富士のすそ野のようだった。
まるでスキーのジャンプ台だ。すぐに友人が集まってきた。やがて最新のスキー靴をはいた友人がいなくなった。畑の隅に昔は、どこの家でも、山羊や鶏を飼っていた。し尿や鶏糞を肥料にする沈殿池があった。越前ではこれを「あっぱんどおけ」という。「あっぱ」は雲古のことで、「どけ」は「ど桶」のフランス語読みだろう。リエゾンというのだったか。または、桶に強めの「ど」をつけたものか。古いおおきな植木鉢のようなものが埋めてあり、板でふたがしてあった。そのふたが外れて、最新のファッションの友人はスキーごと突っ込んだ。「くそったれ」という言葉は彼のためにあった。スキーもからだも近くの川で洗った。

0 件のコメント:

コメントを投稿