2014年9月9日火曜日

ほどほどの大きさ          

ほどほどの大きさ          
 
 ひどい暑さが連日続く。夜中に豪雨、雷鳴、近所の避雷針にシャーシャーと雷が落ち、我が家へ近づいてくる。すごい音、どどんどどん、暗闇の腹に響く。この地球はどうなっているのか。束の間の晴天、家の周囲の除草をする。作業は腰が痛く、腹も苦しい。だが本当につらいときは、脳にモルヒネのようなホルモンが出るという。座ると「雑草のごとく」小学校の先生が黒板に書いた文字が浮かんだ。「雑草のごとく」激しく生きれば、誰かに嫌われるだろう。「踏まれても立ち上がれ」といわれたが、ずっと踏まれたままかもしれない。
 朝日が昇り、一面に蝉の声が響く。一冊の写真集がある。平成二一年に焼失した宰相吉田茂の大磯の大邸宅。戦後を支えた日本一忙しい人だったから、バラの庭、池の管理など、どこか一流の人々に任せたはずだ。テレビでは、松下幸之助会長が就任記念に造った京都の松下真々庵の庭を映していた。会社が管理して、腕利きの庭師が落ち葉一枚を拾う緻密な世話をしている。さて、私はどうか。そもそも日本を代表する政治家、財界人と比較することは何か変だと思った。脳にホルモンが過剰に出たのだろうか。
 
 部屋の中で碁盤を眺める。この大きさ、絶妙な宇宙だ。将棋盤も同じ。甲子園球場をたった九人で守る不思議な野球というゲーム、球場の広さ。テニスコート、卓球台、バレーコート、すべて何か不思議な「おきて」があるようだ。土俵、酒樽、起きて半畳、寝て一畳。清酒1升瓶というボトル。あれ以上飲むと体が壊れる。鯨飲馬食はいけないが、鯨も大海と比較すれば、ちょうどいい大きさなのだろう。志賀直哉は奈良高畑町に大きな住居を建てたが、北向きの部屋を書斎とし「暗夜行路」を完成させた。南向きの部屋は、サロンや妻子が使用した。「私は」、そこで我に返った。「小説の神様」と比べるのもやはり変だ。ホルモンの効果にしても草むしりは良いものだ。

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